歯みがき

3歳までに歯は決まる

ChuChuでは赤ちゃんのオーラルケア商品を多く展開しています。その背景にある考えに「3歳までに歯は決まる」ということがあります。
小児歯科医の広島大学 香西名誉教授より,むし歯になりやすい歯,どうむし歯を予防するかなどについて,詳しくお話いただきました。

広島大学 名誉教授
香西克之 先生

経歴

2001 広島大学歯学部 小児歯科学講座 教授
2021 広島大学名誉教授 

研究分野

小児歯科学 

三つ子の魂百までとはよく言われますが,歯についても幼少期の食習慣や歯のケアが一生のお口の健康につながります。我が国では子どものむし歯の割合(むし歯罹患者率)はこの20年くらいの間に著しく減少し,2020年には3歳で90%, 5歳で60%がむし歯なしです。むし歯のあるお子様の特徴は「間食のだらだら食い」「仕上げみがきの習慣がない」となっています。むし歯の予防についてもう少し詳しく説明しましょう。

むし歯の4つの要因を理解すると予防はできたも同然

むし歯(う蝕)の原因はむし歯原因菌( ミュータンス菌),砂糖,歯質(脱灰能)の3つの要因が重なり,それに時間(習慣)の要因が加わって生じます。特に保護者が気をつけたいのは,砂糖(食生活習慣)とむし歯原因菌(歯の清掃習慣)です。むし歯の発症メカニズムを簡単に説明すると,むし歯原因菌は砂糖を使って粘着性のバイオフィルム(歯垢,デンタルプラーク)を作って歯にくっついて増殖します。続いて増殖したミュータンス菌から代謝された酸が歯面を溶かし(脱灰),やがて穴があきます。これがむし歯の成り立ちです。むし歯を予防するための方法は,これまで述べた4つの要因に基づいて大きく4つに分けられます。

  1. 1.ミュータンス菌の除去➡歯みがき
  2. 2.砂糖の制限➡間食の規則性
  3. 3.歯質の強化➡フッ化物の利用(フッ化物含有歯みがきペースト)
  4. 4.時間➡悪い習慣からよい習慣へ

仕上げみがき(点検みがき)は10歳頃まで

子どもは歯ブラシを細かく操作することはできません。従って保護者の方による仕上げみがきを十分にやっていただきたいです。6歳前後から大人の歯が出てきますが,生えて数年は完全に石灰化しておらず,特に6歳臼歯(第一大臼歯)はむし歯になりやすいため,保護者には小学校4年生くらいまでは仕上げみがきが必要です。

ミュータンス菌の除菌は歯みがきで

ミュータンス菌の塊(歯垢)を除去するのが歯ブラシやデンタルフロスの役割です。時々歯垢の染め出し液を使って「見える化」を行うと,どこに歯垢が残りやすいか学習でき普段からその箇所は丁寧に歯垢を除去することができるはずです。

歯みがきは「磨く」のではなく「汚れを落とす」こと

歯みがきは,英語でもpolish ではなくbrush と表現するように,「みがく(磨く)」のではなく歯に付着した食べかす(食物残渣)や歯垢(デンタルプラーク)を取り除くことです。
歯は食べる機能に欠かせません。言わば体に備わった食具です。食後は,お箸やお皿を洗うように,歯もきれいに手入れしましょう。

むし歯のできる場所は成長とともに変わる

2歳まで:上顎乳前歯
3歳から:上下の乳臼歯のかみ合わせ
4歳から:乳臼歯の歯と歯の間

歯と歯の間(隣接面)がつまっている場合は歯垢が付着しやすいため,特に乳臼歯のすき間は4歳頃からむし歯になりやすくなります。またそれ以前でも乳前歯にすき間がない場合はむし歯になりやすいので,デンタルフロスによるフロッシングが必要です。

歯垢(デンタルプラーク)は台所の流し台の角のヌルヌルと同じ

歯垢はバイオフィルムとも呼ばれ細菌の塊で歯の表面に粘着しています。台所の流し台のシンクの角や三角コーナーにたまったヌルヌルした汚れは,水をかけるだけでなく,たわしで丁寧にこすらないとキレイに落ちません。歯垢も同じです。歯と歯肉の境,歯と歯の間,奥歯の溝など,歯垢が付着しやすい(むし歯になりやすい)部位を歯ブラシやデンタルフロスを使って汚れを落とします。

間食は甘食ではありません

子どもの胃は小さくその割には多くのカロリーを必要とするので成人の三度の食事では摂取量が足りません。間食は朝食と昼食,昼食と夕食の間に栄養を補給するために欠かせないのです。ですから間食の内容は普段の食事と同じでよく,決して甘いお菓子を与える甘食ではありません。
またお菓子ばかり食べて主食を食べてくれないと相談される保護者もいます。主食をしっかりおいしく食べるには,まずはしっかり遊んでお腹を空かせ,食欲を目覚めさせることが大事です。

歯質強化(フッ素イオンの取り込み)も忘れずに

歯はフッ化物を取り込むと,耐酸性が増すためむし歯にはなりにくくなります。
フッ化物の洗口,口腔内へのフッ化物ゼリーの歯面塗布,家庭でのフッ化物含有歯みがき剤(歯磨剤)の使用もおすすめします。これらのフッ化物は局所応用として濃度調整されているため,ぶくぶくゆすぎができない低年齢児には飲み込ませないよう拭き取るなどの注意が必要です。詳しくは歯科医師や歯科衛生士にご相談してください。

むし歯は1日ではできませんが予防も1日ではできません

むし歯の要因の最後は時間(習慣)です。歯みがきを1回しなくても,ケーキを一度にたくさん食べても直ぐにむし歯になるわけではありません。予防も同じく,1回歯みがきやフロッシングをしただけでむし歯が予防できるわけではありません。むし歯は食生活習慣病であり,それを防ぐのも予防習慣です。

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