3歳までに歯は決まる
むし歯になりやすい歯、むし歯の予防方法について、小児歯科医であり広島大学名誉教授の香西先生に詳しいお話をお聞きしました。
赤ちゃんのお口のケアをしているとき、歯に白い塊がこびりついているのを発見し「赤ちゃんなのに歯石が付くの?!」とびっくりされる親御さんがいらっしゃいます。実は、赤ちゃんの歯であっても、大人と同様に歯石が付くことがあるのです。
歯石は歯垢(プラーク)が唾液のカルシウム成分が作用して石灰化したものです。歯垢が形成されるお口の環境になっているのであれば、赤ちゃんでも歯石が付く可能性があります。
ただ、本来生まれたときには無菌状態だったはずのお口の中ですから、歯垢が作られ歯石化しているということは、お口の中に虫歯の原因菌が存在しているという証拠でもあるのです。
もしも歯石を見つけたら、お子さまのお口のケアや虫歯予防を意識していただければと思います。
虫歯の原因菌は、お世話をしてくれる大人から移ることがほとんどです。
同じ食器やスプーンを使ったり、口でフーフーと冷ましたりといった食事の時や、キスなどのスキンシップから感染してしまいます。お口の中に菌が入り込むと、歯垢を形成して繁殖します。これが石灰化して歯にこびりついたものが歯石です。歯垢の中で繁殖した菌が出す酸によって歯が溶けて虫歯になるので「歯石が付いているということは虫歯になりやすいのでは?」と心配になりますよね。赤ちゃんは比較的唾液の分泌量が多いため、虫歯菌の繁殖を抑制してくれる作用が働くので歯垢が形成されにくいとされています。奥歯が生える前の赤ちゃんであれば、歯石が付いていたとしても、虫歯になりやすいとは考えにくいでしょう。
歯石が付いたままになっているのは、あまり良いとはいえません。
虫歯の心配は少ないのですが、歯石が沈着したままになっていると歯ぐきを慢性的に刺激してしまい「歯肉炎」を起こしてしまうこともあるのです。赤ちゃんの歯石は、大人の歯石に比べて柔らかく除去しやすいので、痛みを感じるようなことはありません。もしも歯石が付いていると気づいたら、まずは歯科医院に診てもらい、必要であれば除去してもらうようにしましょう。
歯石が付かないようにするには、歯垢が長期間同じ場所に滞留しないこと。そのためには、歯が生えたら歯磨きケアを始めてあげましょう。歯石が付きやすい場所は、唾液が出る腺がある場所です。大きな唾液腺が耳下腺、顎下腺、舌下腺と3つありますが、2歳前の赤ちゃんは前歯だけのことが多いと思いますので、特に前歯の裏あたりを丁寧に歯磨きしてあげてください。とはいえ、ゴシゴシと強く歯ブラシでこすると歯ぐきを傷つけてしまいます。柔らかめの歯ブラシで優しく磨いたり、濡れたガーゼを指に巻いて、食後に拭き取ってあげるだけでも十分な効果があります。また、奥歯が生えてきたら、歯と歯の隙間は歯ブラシの毛先が届きにくいので「デンタルフロス」が効果的ですので、歯ブラシとの併用がおすすめです。
どんなにしっかり歯磨きしたとしても、お口の中の汚れは60%程度しか落とせないと言われています。
残りの汚れは、毛先が届きにくい「歯と歯の隙間」に溜まってしまうのです。乳歯の虫歯は進行が早く、特に歯と歯の間の「隠れ虫歯」は気づかないうちに進行してしまうため、あっという間に大きな穴になってしまいます。乳歯の虫歯は永久歯の成長や萌出に悪影響を及ぼすこともあるため、適切なオーラルケアを行ってあげましょう。