産婦人科医

赤ちゃんの免疫力

ChuChuから赤ちゃんのいるご家族に向けて、医師であり、母である産婦人科医の池田先生からのお話をお届けします。

<監修医師>
池田 裕美枝(いけだ ゆみえ)

産婦人科専門医 認定内科医 女性ヘルスケア専門医
京都大学大学院医学研究科健康情報学の博士課程に在籍中。2児の母。


京都大学リプロダクティブ・ヘルス&ライトライトユニット代表、NPO)女性医療ネットワーク副理事長
神戸市立医療センター中央市民病院女性外来、京都大学医学部附属病院女性ヘルスケア外来、二宮レディースクリニック婦人科外来などを担当しています。

    

こんにちは。またまた新型コロナの変異株が猛威をふるっていますね。妊婦さんや、小さなお子さんを育てておられるみなさまは、色々気になっておられることと思います。今日は、赤ちゃんと免疫についてお伝えします。

妊娠中の感染症について

妊娠中のお母さんは、「赤ちゃん」という自分と異なるものをからだの中で育てられるようにするため、ほんの少し免疫システムに変化がおこります。このため、妊娠していない時よりもウィルス感染が重症化しやすくなります。ここでいう「重症化」は、より高い熱が出る、とか、よりたくさん咳が出る、とかいうことではありません。新型コロナウィルスでいえば、人工呼吸器をつけないといけないくらい肺炎が悪化するリスクが高くなる、ということです。

だから妊婦さんはウィルス感染症にかからないほうがいいです。

手洗い、うがい、マスク着用、人混みや感染者のいそうな場所を避ける、など、注意しましょう。ワクチンでの感染予防は大切です。生ワクチン(麻疹・風疹・ムンプス・水痘・ポリオワクチンなど)は妊娠中には打てないので、ぜひ妊娠前に打っておくようにしましょう。不活化ワクチンである新型コロナウィルスやインフルエンザのワクチンは妊娠中も打つことができます。妊娠前に打てなかった人は、妊娠中でも打っておいたほうが、メリットが大きいです。

赤ちゃんと抗体

産後、お母さんの免疫機構は数週間でもとに戻ります。

新生児の赤ちゃんに関しては、なんとなく、しっかり清潔にしていないといけないのでは…と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、わりと大丈夫です。なぜなら、産まれて半年ほどはお母さんからの「移行免疫」があるからです。

大人は、たくさんのウィルス抗原を受け入れた経験があり、その経験を免疫細胞に記憶しています。妊娠中に、お母さんの血液中を巡っている抗体は、胎盤を通じて赤ちゃんにも移行しています。新生児の赤ちゃんは、全くなんの防御もない、というわけではなく、お母さんから抗体を受け取っているので、ちょっとくらいのウィルス暴露(※)であれば、自分で防御できるのです。妊娠中にインフルエンザや新型コロナウィルスのワクチン接種をおすすめするもうひとつの理由がここにあります。妊娠中にお母さんが抗体を作れたら、赤ちゃんも、移行免疫を持って産まれてこられる可能性があります。

また、母乳(特に初乳)には、上気道のウィルス感染を防ぐ抗体がたくさん含まれているために、飲まなかった赤ちゃんより、飲んだ赤ちゃんのほうが気道感染のリスクが低くなることが知られています。

でも、新生児の赤ちゃんが持てる防御は初めの一手だけ。0才児の赤ちゃんは、もらった抗体を使うことはできても、自分で抗体をつくることまだ上手にできません。あんまり沢山のウィルス暴露(※)があって、感染が成立してしまったら、赤ちゃんの重症化のスピードはとても早いです。

※ウィルスが赤ちゃんの体内に侵入すること

赤ちゃんの感染症で気を付けること

熱や咳、鼻汁、皮疹など、ウィルス感染症の症状がある人には、新生児の赤ちゃんはできるだけ近づけないようにしましょう。

特に、新型コロナウィルス感染症に関しては、症状が出る前から感染力を持つことが知られています。一緒に住んでいる大人は、密を避ける、マスクを外して会話しない、手洗いを徹底する、など気をつけるようにしてください。

世の中にはたくさんのウィルスがありますが、特に、赤ちゃんに感染すると重症化しやすいウィルスや細菌感染症に関して、赤ちゃんでも打てるワクチンが開発されています。

生後2ヶ月からワクチンスケジュールが始まります。KNOW!VPDのHPなどを参考に、予防できる病気はしっかり予防していきましょう。 

    

ワクチンを打つと決めた場合も、打たないと決めた場合も、おひとりおひとりご自分の健康をご自分らしく大切にできるよう、医療チームみんなで協力できたらいいなと思いますので、心配なことはいつでもかかりつけの産婦人科や小児科でご相談ください。

    


    

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